DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―



なるほど、と思った。


腑に落ちた。理解できてしまった。


だって、おれも朱獣珠に言っちまったことあるもん。おかあさんを返せよ、って。



でも、おれのそれはただの愚痴に過ぎなくて、何かを犠牲にして願いを叶えようとしたわけじゃなかった。


それは絶対の禁忌だと、本能的に感じていた。


願ってしまうことは恐怖でしかなくて、ただ嘆いた。おかあさんを返せよ、って。



あのとき朱獣珠は何も答えずに、せわしなく明滅しただけだ。



ねえ、それとも、おまえ本当は何か言いたかったの?


おかあさんを解放するから代わりに何か食わせろって、おれに言うつもりだった?



まさかね。おれがあいつと同じことするところなんて見たくないよね。


おれもそんなことやりたくねーよ。



じゃあ、その代わりに、おかあさんはずっと帰ってこねぇのかな。