DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―



文徳を背にかばった煥が、白獣珠のある胸元でこぶしを握った。



「あんたには四獣珠の声が聞こえねぇんだろ? 四獣珠はチカラを発揮するために、必ず何かを人間から奪って食わなきゃならねぇけど、そのせいでつらそうだ。

理仁の朱獣珠はいつも悲鳴を上げてんだぞ。その声、あんたは聞いたことねぇんだろ?」



そう、聞かせてやりたい。


朱獣珠は命を食らうたびに、壊れてしまいそうな悲鳴を上げて助けを求めていた。



親父はおれたちを順繰りに見やった。



「去年の暮れのころにね、妻の体調が急に悪くなってしまった。

どうも時間があまり残されていないようで、医者には手を尽くすように頼んだのだが、厳しいものがある、と。

科学の限界というやつだよ。私には奇跡が必要なんだ」