「科学が奇跡に追い付きつつあるって言葉は、戯言でしょうか?」
「そうは思わないのか? きみは科学に詳しいんだろう?」
「確かに科学の力で解決できない事象は、今でもたくさんありますよ。でもね、科学にも限界があると口にしていいのは、学術としての科学をきちんと修めている人だけです。
生贄を仕立てて願いを叶えるなんて非科学的な道を安直に採る人が、何をほざいてるのか」
「きみは、何を差し置いても叶えたい願いをいだいたことがないのか?」
「さあ? ぼくにはその問いに答える義務も義理もありませんね。
でも、一つ苦情を言わせてもらうなら、『何を差し置いても』の部分に自分が含まれるのはイラッとするんですよ。
ぼくを息子の代役にしたかったんでしょうが、ぼくは、鬱陶《うっとう》しい人は嫌いです」



