「理仁、おまえは聞き分けの悪い子ではないはずだ。素直に朱獣珠を渡しなさい」
会話はいつだってちぐはぐだ。
親父の口から吐き出されるのは、おれを雁字搦《がんじがら》めにする呪縛の言葉ばっかり。
皮肉なんだけどさ、言葉の持つチカラをいちばんよくわかってんのは、おれ自身だからさ。
物心つかないころから、おれの心には鎖がかけられてんだ。
親父の呪縛につながれてるのを、手で触れられそうなほどハッキリ感じる。
そんな鎖、気付きもせずに引きちぎってしまえるくらい、おれが言葉から自由だったらよかった。
気付いてしまったら、言霊《ことだま》ってのは、ぶち破るのが難しくて。



