空気、だったのかな。
いなくなった途端、家の中で息ができなくなったから。
親父は、じっと静かな顔をしていた。
おれが七つ目の罪を数え終わると、初めて表情を動かした。
親父は改めて、おれに手のひらを突き出した。
「理仁、おまえが私に反抗的な態度を取るようになってから、すべてがうまく回らなくなってしまった。朱獣珠を私に返しなさい」
ああ、クソ、やっぱり噛み合わないのか。
「違うだろ。どうにか形を保ってた家族が決定的におかしくなったのは、おかあさんがあんなふうになったのがきっかけじゃん。あんたが狂わせたんだよ」



