「七つ目、あんたがおかあさんを追い込んだ。おれが中三のころ、あんたはまた事業に失敗しかけたんだろ? 尻に火が点きそうになったとき、
おかあさんが朱獣珠に願った。自分の身はどうなってもいいから夫を助けてほしい、って。その結果、おかあさんは……」
死んではいない。
でも、生きていると言い切ることが、おれにはできない。
おかあさんってどんな人だったんだろう?
改めて考えると、よくわかんねぇんだ。
強い人じゃなかったんだろうなって、姉貴と比べたらそう感じる。
まあ、割とよく笑う人だったかな。
好きな食べ物は知ってる。趣味は、たぶん特になかった。
他人とトラブルを起こすことがない人だった。
うちにはハウスキーパーが入って仕事してたんだけど、おかあさんもそこに交じって一緒に家事をしてて、うるさがられることが全然なかった。
一方で、頼られるって感じでもなかったっぽい。



