親父は首をかしげた。



「理仁《りひと》、何が不満なんだ? ここ数年は事業も安定して、不自由をさせたことはなかっただろう?

おまえたちが幼いころには何度か経済的に危ういことがあったが、それも一時的なもので、埋め合わせはしてきたつもりだよ」



おれは肩をすくめて、やれやれと首を振る。


親父のことなんかバカにし切った不良息子を演じる。



「金の問題じゃねーよ。あんた、自分がトチ狂ってるって、どんだけ理解してる?」


「親に対してその口の利き方は感心しないな。友達の前で見栄を張ったり悪ぶったりしたい年頃なのはわかるが」



見抜いてくれやがって。


確かにおれは、一人じゃ何もできなくて、まわりのみんながいるからここに立ってられるんだけどさ。



数え上げてやるよ。


おれがどんだけあんたを嫌ってるか、それを証明するための、あんたの罪の数を。