DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―



戦闘要員の二人は、武器を捨てたばかりの手で、すかさずロープと猿轡《ボールギャグ》を外しにかかる。


二人とも、まったく抵抗せずにおれの号令《コマンド》に従った。



そりゃそうだよな。


まともな大人なら、高校生の女の子をつかまえたり閉じ込めたり縛り付けたりなんて、やりたくねぇよな。



親父が冷たい目をした。



「勝手なことをするな」



次の瞬間、止める間もなかった。


さよ子の足下にかがみ込んだ一人の頭を、親父は革靴で踏み付けた。


彼が痛みに呻いて頭をかばうと、がら空きの脇腹に、みぞおちに、革靴の硬いつま先が突き立てられる。



姉貴がおれを押しのけて前に飛び出した。



「やめてよ! いい加減にして!」



思い切った勢いで、姉貴は親父にぶつかっていった。


突き飛ばす、というところまでいかない。


親父は、二、三歩、後ずさった。姉貴を見下ろす。