DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―



部屋の中には四人がいた。


そのうち二人は暗色のスーツの戦闘要員で、それぞれの手からナイフをカーペットに投げ落としたところだ。



一人は、イケメン紳士と名高いスーツ姿のクソ野郎。おれの親父、長江孝興。



最後の一人は、その姿が目に飛び込んできた瞬間、おれは首筋のうぶげが逆立つように感じた。


さよ子は手錠を掛けられて、淡い青色のワンピースの細い胴と、折れそうに華奢で白い脛《すね》は、ロープで椅子に縛られている。



おれたちの姿を認めた途端、さよ子は涙だらけの顔を輝かせた。


猿轡《ボールギャグ》を噛まされた口から、言葉にならない声があふれる。


閉じられない唇の端からよだれがこぼれていて、涙と混じってあごからポタポタ伝い落ちてるのが哀れだ。



おれは反射的に命じた。



【拘束を解け! 今すぐ!】