親父の車のすぐそばに、機能性丸出しの金属製の自動ドアがある。


おれは自動ドアの前に立った。


頭上の赤外線センサが仕事をする気配。カメラがおれを見る。顔


認証システムが働いて、おれの顔をVIP待遇者のリストと照会したらしい。


その結果、ドアはうんともすんとも言わない。



まあ、予想どおりだね。物理的に鍵を解除してやるだけだ。



ドアの脇にコントロールパネルがあって、暗証番号を入力したり内線電話をかけたりの操作ができる。


タッチキーの並びの隅っこには、鍵穴。



おれは、順番を整理して目印を付けて束ねてある鍵の中から、今必要な一本を取り出した。


鍵穴に差し込んで、ひねる。


あっさりと自動ドアが開く。



こういうとこがちょろいんだよ、親父は。


表から見えない場所や万が一への備えには金をかけようって発想がない。


上手に世間の足下を見るのが賢いやり方だって信じてる、ありがちな半端者の金持ち。


そういうのは、賢いんじゃなくてセコいって言うんだ。