海牙が音も立てず、いつの間にか、おれの隣にいた。
「ハッタリみたいなものですね。防犯カメラや通報のための装置がつけられているわけでもない。急ごしらえのようですし。
理仁《りひと》くん、ちょっと離れていてください。危ないので」
「え?」
「それから、耳をふさいでおくほうがいいかもね。うるさいと思いますよ」
言うが早いか、いきなり海牙は、手にしたヘルメットをシャッターに叩き付けた。
ガシンッとも、グォンッとも聞こえる響き。
硬いもの同士がぶつかる音に、空気を介して鼓膜をぶん殴られる。
「み、耳が痛ぇ」
「やっぱりステンレスですね。特別に分厚いというわけじゃなさそうだ。このくらいなら問題なく、ぶち抜けますよ」



