「おれんちの資産って、あのバカデカい学園も含めて全部、朱獣珠のチカラで引き寄せた代物なんだよ。
その陰にあるのは、金額にしたら何万分の一に過ぎない動物たちの命でね。親父はちょっと手を汚すだけで、ポンポン資産を増やしてきた」
文徳が痛々しそうに顔をしかめている。
煥もそっくり同じ顔。やっぱり兄弟だな。
鈴蘭が胸のあたりでギュッとこぶしを握ってるのは、青獣珠の鼓動を確かめてるんだろうか。
鈴蘭はおれと姉貴を交互に見て、今にも泣きそうな顔をして言った。
「わたしは、宝珠に願いをかけてはならないって、預かり手だった祖母や母から聞かされて育ちました。
預かり手は、ただ預かるだけ。宝珠は奇跡のチカラを持ちながら眠っていて、人間はその眠りをさまたげて因果の天秤を揺らしてはならない」



