朱い石が怖かった。
おれと姉貴の大切な動物たちの命を次々と吸っていく朱い石は、魔物みたいだった。
朱い石を使う親父もきっと魔物の仲間なんだと、いつしか思うようになっていた。
高一の夏、ばあちゃんが死んだ。
ひいばあちゃんから預かったという漆塗りの書類箱を、おれに残して。
書類箱の中身は古文書だった。
四獣珠について、預かり手の役割について、願いと代償の等価関係について、チカラと禁忌の均衡について。
おれはそれを読んで、初めて、あの朱くて怖い石の正体を知った。
自分と朱い石の関係を知った。
ひいばあちゃんは先代の朱獣珠の預かり手で、おれが生まれると同時にチカラを失ったらしい。
それは親父にとって絶好のチャンスとなった。
朱獣珠は、預かり手ではない親父の手に渡った。



