みんなに聞いてもらうべきは、朱くて怖い石の話。



親父がたびたび、ニタッと笑いながら朱い石をのぞき込む光景は、ごく幼いうちから記憶に焼き付いていた。


直径二センチちょっとの石は、まるで生きた目玉みたいにギョロギョロとした光を放っていて、幼いおれには怖かった。



ある夜、飼っていた犬が、ただごとじゃない悲鳴を上げた。


ドア越しにそれを聞いたおれと姉貴は、慌てて庭に出て犬の姿を探した。



朱い石が光っていた。


朱い石を持った親父の足下に、犬は血まみれで息絶えていた。



あのとき、親父は何て言っただろう?


強盗が入って、犬が命懸けで撃退してくれたとか、そういう嘘だった気がする。



「嘘ってことはわかってたよ。うちさ、しょっちゅうペットが死んで、すぐ新しい子が来てたんだけど、親父が利用するためだった。

宝珠は、願いをかけて代償を差し出したら、どんな奇跡も起こしてくれる。その代償としていちばん価値が高いのは、命なんだ」