文徳が、クシャッと笑いじわを作ってみせた。



「待ってたんだぞ。理仁の家は大変そうだなって薄々知ってて、力になれることがあるにせよないにせよ、

せめて俺のところを逃げ場として使ってもらえないかなって思ってて。俺は何もできなくても、煥がいるからどうにかなるかもしれないぞって」



とっさに出た言葉。



「ごめん」


「何で謝るんだ?」


「おれにもわかんねえ」


「何だそれ?」



文徳が噴き出す。


不意に、おれは視野が広がった。


みんながこっちを見ている。


姉貴と目が合った。姉貴は、唇をきつく噛んでいる。



話さなきゃいけない。


おれと姉貴だけではどうにもできなかったから。