あれ? でも、文徳にはけっこう腹を割って話さなかったっけ?
チカラのせいでいろいろあれこれ苦労してきたこととか。
おれも姉貴も親父のこと嫌ってることとか。
ペットが軒並み早死にしたこととか、母親が入院してることとか。
親父が朱獣珠を使いまくってジャンキーになってることとか。
ああ、そうだ。
「家族のこと、話してなかったんだ、おれ」
いつかは話そうと思っていた。
でも、時間が足りなかった。
おれは、自分が本当に文徳を信頼できるようになるまで待とうと思って、待って待って待って、一年が経過して、そのままろくに挨拶もせずに日本を離れた。



