肩を揺さぶられる。
おれはまぶたを開ける。
文徳がおれの顔をのぞき込んでいる。明るい茶色の目。
文徳のまなざしが涙でうるんでいることに、向き合って初めて気付く。
「何で泣いてんだよ?」
「もどかしいから。俺は何のチカラも持たないし、理仁の境遇を知ってても共感できずにいるし、
理仁が俺にも誰にも心を開こうとしてくれないし、どうすればいいのかわからなくて、もどかしいんだよ」
「心を開く?」
他人に心を開かせるのが、号令《コマンド》使いのおれのチカラで、心を開くってえげつないことだなって、昔から思い知っている。
だから、おれはよっぽどの相手じゃないと、そんなことしたくなくて。



