自分の顔が歪むのがわかった。
笑みを押し通したい唇が勝手にひん曲がって、眉間にしわが寄って、顔の中でも普段使わないような変なとこに力がかかって、自分の表情がどんなふうなのか、まったくわからない。
おれはきつく目を閉じた。
文徳の声が聞こえる。
「理仁の気持ちは、俺にはわからないよ。俺には両親がいない。生きてたころの父親はカッコよくて、よく遊んでくれて、子どものころの俺にとって憧れの存在だった。
理仁が今どんな気持ちで笑ったのか、怒ってるのか、俺は共感するための素養を持たない」
文徳の静かな声はグッサリとおれを刺して、ザクザク音を立てながら、傷口をえぐっていく。
痛くてキツい。
何でこんなもんを正面から受け止めなきゃいけないんだ。



