県境の峠道を三台のバイクが駆け抜ける。


煥《あきら》が後ろに鈴蘭を乗せて走って、フォーメーションを組むみたいにピッタリと文徳《ふみのり》が煥のバイクを追って、おれは文徳のバイクにタンデムして、最後尾が姉貴だ。


伊呂波兄弟が住むマンションに戻って、ライダースーツに着替えた兄弟のバイクに四人で分乗して、レンタルバイク屋に開店アタックをかけた姉貴と合流して、県境の高原地帯にある平井家の屋敷に向かっているところだ。



バイク三台を先導する海牙は、ローラースケートで突っ走る。


バイク並みの速度が出ている。


バイザーを掛けて目を保護してるほかは、完全に生身。


さすがに異様すぎる光景で。



【車の皆さ~ん、こっち来んなよ! 絶対、この道、通んなよ!】



おれはずっと、けっこうな大声で号令《コマンド》を飛ばしまくっている。


それなりに交通量のある大都高校の近くを通るときなんかは、命じなきゃいけない対象が多いし範囲も広いしで、実はかなり疲れた。