DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―



光を映す煥の顔に驚きが広がった。


切れ長の目がまっすぐに鈴蘭を見下ろす。



パックリと開いた傷口が、だんだんとふさがっていく。


あの青い光は、傷を治すチカラなんだ。



鈴蘭は横顔をしかめて、ギュッと目をつぶっていた。


痛みをこらえる顔だ。肩が細かく震えている。



煥は怪訝《けげん》そうに眉をひそめた。



「どうした?」


「い、痛い……煥先輩、こんな痛いのをこらえながら戦ってたんですね。わたし、今、同じ痛みを感じてるんですけど、ほんとに痛い……」


「バカ、もういい。よせ」


「イヤです! ちゃんと治します!」



痛みに対する耐性は人それぞれだ。


女のほうが痛みに強いっていうけど、それまた個人差があるはずだし。



というか、真っ赤に裂けた傷は、見るだけで痛い。


煥はケンカ慣れしてるからケガの痛みにも慣れてるんだろうけど、けっこうえげつない傷だ。