煥が肩越しにおれを振り向いた。



「十分だ、理仁《りひと》。助かった」



いつの間にか、白い光の障壁《ガード》はなくなっていた。


海牙と煥がうなずき合う。


二人同時に地面を蹴って飛び出す。



舞うように、とでも言えばいいんだろうか。


ケンカしてる様子を、舞いに例えるのもおかしな話かもしれないけど。


でも、海牙も煥も身のこなしが美しくて、おれは見入ってしまった。



海牙はしなやかだ。


柔軟な体を器械体操みたいに旋回させて、勢いを乗せた攻撃で華麗に敵を打ち倒す。



煥の動きは削ぎ落としたように無駄がなくて、いっそ武骨なほどだ。


素っ気なく見える一撃一撃が鋭くて重い。



三人、四人、五人。


おれの号令《コマンド》を受けて全身をこわばらせた覆面たちが、あっという間に打ち倒されていく。


六人、七人、八人。


ヤベぇ、おれ、膝が笑ってる。おれもド派手に暴れてやれたら爽快なんだろうけど、全然無理だ。