おれが路地に駆け込んだときにはもう、戦端は開かれていた。


海牙と煥《あきら》が背中合わせの立ち位置で身構えている。


そこにだけ外灯の光が落ちて、視界がいい。



「しつこいんですよ、彼ら。先日も丁重にお相手してあげたんですが、手加減しすぎましたね。もっと激しいのがお好きなようで」


「そんなにしょっちゅう、こんなのと戦ってるのか?」


「しょっちゅうなんて、まさか。今までは、カツアゲしに来る不良をいじめ返して遊ぶことはあっても、戦闘のプロとのケンカなんてしたこともありませんでした。

今年に入ったあたりからですよ、彼らがぼくに目を付けたのは」



海牙の足下には一人、暗色の服を着た男が引っ繰り返って伸びている。


覆面のせいで、顔は見えない。