「おや、襄陽学園の伊呂波文徳くんのほうが有名人でしょう? 生徒会やバンドで活躍するだけじゃなく、受験生としての学業成績は十分だと聞いてますけど」
「もうちょっと手を抜きながら成績を維持できないかと考えててね」
「なるほど。でも、ぼくの勉強の仕方は誰の参考にもなりませんよ。これから行くのも、参考書じゃなくて小説の新刊を探すためだしね」
 進学校の大秀才のくせに意外すぎることを言って、海牙はゆったりと歩き出した。いや、ゆったりに見えるけど、去っていくペースが異様に速い。注意してみると、動きがしなやかすぎて非現実的。よくできたCGみたいだ。