海牙は、隣町の男子校の制服を着てる。


のっぺりしたグレーの詰襟だから「墓石」って陰口叩かれてる制服だってのに、手足が長くてスタイルのいいやつが着ると、こうもシックに決まっちゃうもんなのかね。



「わたし、きみのこと探したのよ。あのとき、きみはあっという間にいなくなっちゃって、お礼もできなかったから。

学術交流会だっけ? そういうのに参加してたんでしょう? 最終日のパーティ会場まで行ったりもしたの。会えなかったけど」


「あのときは、すみませんでした。犯人を問い詰めるところまでやったほうがよかったかもしれないんですけど、そんな面倒くさい雑事よりも重要な用事があって。

聴きたかった講演の時間が迫っていたので、急いでいたんです」


「講演? そっか。あの場所、大学の裏手に当たるわね。きみがあの道を通ったのは、その講演を聴きに行く途中だったから?」


「はい。偶然でした」