夕暮れの駅前の雑踏の中で音楽が始まろうとしている。


ストリートで演奏するときの瑪都流《バァトル》は、スタジオやライヴハウスでやるときとは少し編成が違う。



ドラムセットを持ってこられないから、ドラマーの牛富は機械いじりに徹する。


打ち込み音源のドラムを流しながら、音響の調整や録音、DJ的なことまで。



シンセサイザーの雄も、持ち運びが簡単な軽量型のキーボードだ。


効果音の種類がちょっと変わる。そのわずかな違いをあれこれと熱く論じるファンがいる。



スタジオバージョンではどうのこうの、ストリートバージョンのほうが云々かんぬん。


すっげーコダワリをぶつけ合う議論を、暇つぶしも兼ねて聞いてたんだけど。



どっちだっていいじゃん。


優劣つける意味、ある?


どっちのバージョンだって、あいつら全員が合意して納得して創ってる音なんだってば。