親父は欧米人よろしく肩をすくめた。


ひらひらと雄弁なジェスチャーをする右手の親指には、下品なマニキュアで塗りたくったようなショッキングピンクの胞珠がある。



「仕方ないな。必ず学校に来るんだぞ」


「わかってるって。じゃあね~」



言い捨てて、おれは駅のほうへ向かう。



あー、具合悪い。


頭痛がひどい。歩くたびにズキズキ響く。


しかも、空っぽの胃袋が七時間の時差に反発して、吐き気がする。



どうして帰ってきちゃったんだろうな。


繰り返す疑問。答えはわかってる。



胞珠が示した道だから。



逃れられないルートの上にいるんだって、何となく感じる。


終わりの瞬間までを数えるカウントダウンが聞こえることがある。


おれの人生の終わりだか、この世界の終わりだか、わかんないけど。



カウントダウンの存在、気のせいなんかじゃねーんだ。


チカラの副産物かな、おれ、勘が鋭すぎるとこがあって。