独占ってさ、それが恋愛の究極形なんだろうか。


相手のこと、もう完璧に思いどおりにできる。



魅力的なシチュエーションかもしれないね。


それはおれにも理解できるよ。


自分じゃない人間って、思いどおりに動かせないのがデフォルトだし。



ふと、風があることに気が付いた。


おれは思わず足を止めた。



「長江先輩? どうしたんですか?」


「このへんからどこか別の場所に行けるかもしれない。風が吹いてる」


「あっ、ほんとですね」



弾んだ鈴蘭の声に、その瞬間、別の声が重なった。


いくつもの呻き声だ。


意外に近い。