「そろそろ帰るかー。」



「そうだね。だいぶくらくなったし。」



部活が終わってからあのフラれた



砂浜で話していた。



もうすっかり日が沈み、暗くなっていた。



私たちは立ち上がり道路への階段を登った。



「もうすぐ最後の大会だな。」



「うん。さみしいねー。」



「うん、あのさ、もし俺が100m一位だったらさ、」



「うん。」



「あー、やっぱなんでもない。」



「なにそれ!気になるじゃん。」



「どうせ、アイスおごれーとかそんなことでしょ。」



「まあ、そんなとこかな。」



「やっぱねー。まあー、一位になったら何でもしてあげるよ。」



「まじで。」



「うん、遥は絶対一位にはなれないからねー。」



「何でだよ。」



「だって遥私より遅いじゃん。」



「おい、それはお前が勝手に言ってるだけだろ。」



「ふふ。どうだかねー。」



「ぜってー、一位になるから。」



遥はまた自信満々にそう言った。



話に夢中になって気づかなかったけれど



さっきよりますます辺りは暗くなっていた。



私たちは街灯ひとつない海沿いを



たわいもない話で笑いながら歩いた。



「あれ。遥、家過ぎたよね。」



気がつくと遥の家はとっくに通りすぎていた。



「あー、もう暗いから送ってく。」



「へー、優しいとこあんじゃん!」



私は遥の腕を叩きながら言った。



「いてーよ。」



遥は、笑いながら叩いた腕をさすった。



「ねー、遥は彼女とかいないの?」



「いないよ。なんだよいきなり。」



「だってー、遥、女友達私しかいないじゃん。」



「いるわ、それはおまえだろ。」



「遥、好きな人いるの?」



「まあー、うん。」



「え!どんな人?」



私は心臓が飛び出しそうなくらい胸が



どきどきしているのを感じた。



「んー、笑った顔が可愛くて、一緒にいて楽しくてー」



「あー、同じクラスの子だよ。」



え、同じクラス…。私と遥は違うクラス。



ちょっと期待した私が恥ずかしくなる。



「そ、そーなんだ!」



「同じクラスなら頑張りなよ!!」



気持ちがばれないように空元気をだした。



「うん、頑張ってみるよ。」



私の家に着いた。



「送ってくれてありがと!」



「気をつけて帰ってね!」



「うん、また明日な。」



遥は、走って帰っていった。



私はその後ろ姿を見つめた。