さっきまでなんとも思わなかった向かい風が、肌に突き刺さるように痛く感じる。
「じゃあ、二度と陽太くんに近づかないで!
アンタみたいなのがいると、うざいだけだから」
終いにはそんなことまで言われて。
臆病な私は、それに言い返すことすらできなかった。
*
「……ち?茜っち、大丈夫?」
「え?」
「今、すごいボーッとしてたけど」
次の日の朝。
二番目に教室にやってきたひーくんに、心配そうに顔を覗かれた。
「だ、大丈夫だよ!」
「……なにかあったなら、俺に相談しろよ?」
「……うん」
優しい彼は、やっぱりそんな風に言ってくれて。
心配かけて申し訳ないと思うのと同時にハッとして思い出す。



