さっきまでなんとも思わなかった向かい風が、肌に突き刺さるように痛く感じる。


「じゃあ、二度と陽太くんに近づかないで!

アンタみたいなのがいると、うざいだけだから」


終いにはそんなことまで言われて。


臆病な私は、それに言い返すことすらできなかった。





「……ち?茜っち、大丈夫?」


「え?」


「今、すごいボーッとしてたけど」


次の日の朝。


二番目に教室にやってきたひーくんに、心配そうに顔を覗かれた。


「だ、大丈夫だよ!」


「……なにかあったなら、俺に相談しろよ?」


「……うん」


優しい彼は、やっぱりそんな風に言ってくれて。


心配かけて申し訳ないと思うのと同時にハッとして思い出す。