「ねぇ、加藤。直樹たち見なかった?」
「さぁ……、見てないな」
私がたずねると、苦笑いを浮かべる彼。
やっぱり、加藤も見てないか……。
「そっか。ありがとう」
「おぅ。なんも役に立たなくてごめんな」
一旦教室に戻るべきと判断した私は、踵を返そうと足を動かす。
だけどその直後、後方からやってきたひとりの女子に気がつかず、思いっきりぶつかってしまった。
「わっ!……ごめんなさい!大丈夫!?」
しりもちをついたその子に慌てて駆け寄った私は、すぐに自分の手を差しのべる。
「あ……、大丈夫です」
その子は私の手を握って立ち上がると、砂で汚れてしまったと思われるスカートの後ろをパッパッと払った。



