「今の音、颯太くんの携帯じゃない?」
「いや、俺のではないよ」
肯定の返事を予想していた私は、その言葉に思わず目を丸くする。
「え、じゃあ誰の……」
「陽太、時間なんだろ」
颯太くんは私から目を逸らすと、反対側にいるひーくんに声をかけた。
…………〝時間〟って、なに?
「……本当だ。お昼に帰るんじゃなかったのかよ」
スマホの画面を覗きこみながら、ひーくんが眉をひそめてぼやく。
……あ。ひーくんが帰る時間のことか。
ひーくんが帰り支度を行っている姿を見て、ひとりで納得した。
そっか……。もう、ひーくん帰っちゃうんだ……。
「次は、いつ来れるかなー……」
ジャンパーを羽織りながら、ため息混じりに彼は言った。



