「そういえば、どうしてインターホン鳴らさずに、外で待ってたの?」
靴を脱ぎながら、颯太くんが不思議そうにたずねる。
「あ……、颯太くんの家の表札……おかだって書かれてて……。
だから、その……」
「え!マジで!?」
颯太くんは目を丸くさせると、脱いだ靴をもう一度履き、玄関の扉を開けた。
「颯太くん?」
「あ、あれか……!」
外からの強い風に顔が歪みながらも、走っていく颯太くんの姿を見つめる。
すると颯太くんは、なにか紙らしきものを手にしながら、家の中へと戻ってきた。
「ごめん、これ剥がれてたみたい……」
そう言って、私の目の前に見せたのは、〝Kawashima〟と書かれた白い紙。
上のほうには、セロハンテープもついているところから、元々表札につけていたものだと読みとれた。



