「え?茜、どうしたの?」
『これ、少しでよかったら食べる?』
手話は使えないから、代わりにジェスチャーでそう伝える私。
「いいの?」
目を丸くして驚く優乃ちゃんにコクリと頷く。
そして、クレープを前に差し出した。
優乃ちゃんは遠慮がちにクレープにかぶりつくと、すぐに幸せそうな顔に変わった。
「これ美味しい~!ありがとう、茜!」
「そんなに美味しいんだ……。俺も食べていい?」
私たちのやりとりを横で見ていた颯太くんが、私にそう問いかける。
私はちいさく頷くと、今度はそのクレープを颯太くんの口に近づけた。
「本当だ!美味しいな!
あ、茜!俺のも食べる?」
そう言うと今度は颯太くんが自分のクレープを私に向けた。



