そのまま軽く十回ほどその動きを続けていると、近くで見ていた優乃ちゃんが驚きの声をあげた。
「茜ちゃん、すごいバレー上手いね!」
その言葉で私はボールを投げるのを止めると、彼女に手話でお礼をした。
『ありがとう』
……今までそういうこと言ってくれる人ひとりもいなかったから、すごく嬉しいな。
「アイツにも茜のバレーの上手さ見習ってほしいよ」
優乃ちゃんはあきれたように呟く。
……アイツって、誰のことだろう?
誰だかわからずに首を傾げていると、優乃ちゃんが私にもわかるようにその人物を指差した。
その人はさっきからボールを追いかけてばかりで、全然練習になっていなくて──……。
……って、あれって……。



