満員の車内で喋る人はほとんどおらず、電車の揺れる音だけが響く。
多分に漏れず、私と翔も揺れる電車に身を置くだけで、無言のままだった。
ただ、この状況で40分近くいなければいえないのは正直辛かった。
久しぶりに会ったというだけでない。SNSを無視されてしまった私としてはとても気まずい状況だ。もしかしたら翔も同じように思っているかもしれない。
どうせ再会するなら、今日の飲み会でみんなが揃っている時にしてほしかった。
『まもなく聖蹟桜ヶ丘~』
人の出入りがあるたびに、翔は壁に手をついて、私が押しつぶされないように守ってくれている。
Tシャツから延びる細い腕は、力が込めらると意外にも筋肉質な事がわかる。それだけ翔が入ってくる人に強く押されているのがわかった。
「大丈夫か?」
それなのに翔は、私の心配をしてくれる。
「うん……。翔こそ……大丈夫?」
「俺は平気」
扉が閉まり、電車が動き出す。
私は小さく「ありがとう」と呟いた。



