「漣のこと、気にしてるんだ」

他の4人とは座席が離れていて、今はあたしたちふたりでしか会話をしていない。

「漣の憧れの人なら気にしなくていいよ。井上相良は確かに未薇さんを傷つけたけど、君のことは守ってくれたよ」

「……どうゆうこと…」

彼が教えてくれたあの瞬間のことはあたかも『あたしのせいでお母さんが傷ついた』という風だった。、

「…君は本当に昔からドジだったよ。それで、何度か交通事故に合いそうになったんだよ。その時、君を助けたのが井上相良だってわけ。」


「だから、俺らはあんまりあの人のことは恨んではないよ」

「……どうして?お母さんを傷つけたのに……あたしは許さない」

あたしの、唯一無二の血の繋がりのある母親。

「未薇さんの直接的な死因には関係ないよ」

「……そーなの?」


あたしは、少しも思い出せないんだ。…”あたし”のことを。

「”麗薇”のことなんて、思い出さなくてもいいよ」

「ただ、”自分自身”のことは否定しないで」


琉が言い終わった後、彼のスマホに電話がなった。

『てめえっ!琉!なにあいつ連れて行ってんだよ』

隣にいたあたしにも声がきこえるほど、叫んでいる。

「……るっせえ。お前声でかいんだよ」

一気に琉が不機嫌になって、少し怖い。

もちろん、電話の相手は雫雲だ。

『はぁ?!先回りしてやる!』

そういい、一方的に電話を切った雫雲。

「…なあ。おまえらイチャつきすぎじゃね?」

そういったのは、ツカサ。

「麗薇ー。久しぶりの再会だろー?俺にも構えよ」

「やだ。ツカサ、触んないで」

「つれねぇーなあ」