「明里」

低く呼ぶ声に胸元から離れてそっと見上げる。と。間近にあった亮ちゃんの顔が寄せられた刹那に、接吻(くちづけ)された。ほんの短いキス。・・・でもそれだけで十分に伝わってきて。

『待ってろ』

『・・・待ってる』

言葉にならない約束を交わす。


切れ長の深い眼差しがわたしを見つめ返す。
愛おしそうに揺れてる。

わたしも真っ直ぐに見つめてる。
亮ちゃんと。何があってもこの手から離さないって決めた未来を。


その背中の、遥か向こうまで。




【完】