30分後に迎えに来る、と言われたのを思い返し。慌てて洗濯物を取り込んだり片付けたり。自分の支度と、慎重に戸締りを確認して玄関を出た。
 エントランスの自動ドアを抜けると、路上にメタリックブルーのステーションワゴン車がハザードを点滅させて停まっている。
 
「お疲れさまです」

 ロングスカートの裾と肩掛けのショルダーバッグとを気にしつつ助手席に乗り込み、着替えと小物が入ったトートを膝の上に乗せた。

「・・・お疲れ」

 ライトグレーのカットソーにベージュのコーチジャケットを羽織り、ジーンズにデッキシューズ。私服の津田さんは、ちょっと爽やかな人に見えなくもない。スーツの時は胡散臭い、じゃなくて・・・えぇと。


 カーステレオからは控えめな音量でジャズっぽいメロディが流れ、彼が無口なのはいつものこと。わたしも黙ってウィンドゥの外を流れる景色を眺めている。
 
 週末は必ず亮ちゃんのマンションに居るのを知っている津田さんが、こうして送ってくれるのも初めてじゃない。お休みなのに悪いなぁと思うんだけど。

『小動物の面倒みるのも給料のうち』

 億劫そうに言われて終わる。 
 そんな手当がついてるのかな? ・・・査定とかよく分からない。