自分の家の掃除はナオやお父さんと分担だけど、ここを一人で全部やるとなると2LDKでも半日がかり。

 亮ちゃんは本当に最低限の物しか置いてなくて。寝室じゃない方のもう一つの部屋は全く使っていないし、トイレットペーパーとかの日用品の買い置きもどこにもない。いつでも引き払える仮住まいかと思うぐらい。

 昔の亮ちゃんの部屋は普通に漫画もあったし、机の上にはパソコンとか、引けないのに貰いもののギターが飾ってあったり。
 よく平気でベッドに寝転がるわたしに、深い溜め息吐かれてたっけ。ふと思い出した。・・・やっぱり制服のままって言うのが悪かったんだよね? 


 
 ひととおりの掃除を終わって、リビングのソファでティータイム。
 窓越しに、物干しに広げて干したライトグリーンのベッドシーツが、風にはためいているのが目に映る。今日は薄日であまり渇きは良くなさそう。帰る前に室内干ししてかなきゃ。

 そんなことをぼんやり考えていると。スマホが着信音を鳴り響かせたから、びっくりしてカップを落としそうになった。画面を見れば『津田さん』の表示。この人の場合、いつ掛かってくるか全く予想できないから、そっちは逆に驚かない。

「はい手塚です」

 タップして応答する。

『・・・日下さんとこに居るんだろ?』

 抑揚のない淡々とした相変わらずの口調が耳に届く。自分も名乗るとか相手の都合を確かめるとかいうのも、津田さんは省くほう。

「はい。今ちょうど掃除が終わったところで・・・」

『近くまで来たついでに送ってやるよ。30分後に下で待ってろ』

「あ、はい」

 ありがとうございます、を言おうとしたらもう切れていた。
 亮ちゃんはここまでせっかちじゃないかなぁ。・・・・・・・・・。