「・・・・・・亮ちゃん」

最後まで後悔だけはしないように。ゆっくり顔を上げると、亮ちゃんも顔を振り向けてわたしを見つめていた。いつの間にか車はどこかの空き地に停車していた。

「・・・わたしの幸せって、なに・・・?」

亮ちゃんが僅かに目を見張った。

「わたしの幸せは誰が決めるの・・・? ナオ? お父さん? ・・・亮ちゃん?」

エンジンの呻る音がわたし達の間に低く響いてる。

「結婚して家庭を作って、それが普通のシアワセってことなのは分かってる。みんなが言うのは間違ってない。・・・でもわたしは、今こうして亮ちゃんが目の前にいてくれることが一番しあわせ。わたしを見て、いてくれるだけでしあわせ。・・・亮ちゃんと離れて生きても、わたしは幸せにはなれない。どうやって幸せになればいいの・・・? おしえて亮ちゃん・・・・・・」

込み上げてくる想いに堪えきれなくて涙が零れた。

「亮ちゃんはずるい、どうして逃げちゃうの・・・。どうして、わたしと生きて死ぬ覚悟をしてくれないの? 背中の花は・・・どんな覚悟もできるってことでしょう・・・?」

頬を拭っても拭っても、溢れて止まらない涙。

「わたしは・・・あの花を見せてもらった時からそうしようって決めたの。ずっと、・・・だから・・・っ」

「・・・・・・明里・・・」

亮ちゃんがわたしのもシートベルトを外して抱き寄せてくれた。大きな掌の温もりが頭の後ろを、何度も包み込むように撫でるから。余計に感情が昂って嗚咽が漏れる。
か細く声を上げてすすり泣くわたしを亮ちゃんは黙ったまま、いつまでも抱き締めて。優しく撫で続けてくれた。