「ねー明里ちゃんっ彼氏のヒト、いつ来れンの?! あたしも会いたーいっ」

「どうかなぁ・・・。都合ついたら連絡来ると思うけど」

「えーっ、だってそしたらあたしだけ見れない~っ」

4日から勤務が始まるユカは、3日の夕方には寮へ戻る予定になっていた。

「ナオちゃん写メ送って!」

真剣な顔で、杏飴を口に入れたナオに詰め寄ってる。

津田さんには、休みに入ってから『家族がお正月に会いたいようです』とだけ、ラインで送ってあった。既読にはなっていたけど返信は来ない。
『行く』と言われても正直、嘘を吐き続ける自分が辛い。わたしが近い将来に彼と結婚すると信じて疑わないお父さん達。津田さんはどういうつもりで。



本殿の明神様にたった一つの願いごとを託して。参道脇に並ぶ屋台を覗きながら、にぎやかに帰路についた。

「今年こそイケメンドクターをゲットしてみせるぅっ」

「漫画の読み過ぎだろ。現実見ろ、現実を!」

ニットの帽子を被ったユカの頭を、ナオがぽんぽんと叩くのを。後ろから微笑ましく見守ってる自分。
来年はナオの彼女が奥さんになって人数が増えてるかも知れないし。ユカが本当にイケメンドクターの彼氏を引っ張ってくるかも知れない。まだ分からない。先のことは何も。



わからない。