クリスマスを過ぎれば、一年の締め括りまであと僅か。
不動産事業の仕事は特に年末の追い込みもなく、ファイリングの整理や大掃除モードで机に向かっている時間より、躰を動かしている時間の方が多い。その方が余計なことを考えずに済むから、かえって楽だった。

しかも今年は、給湯室と休憩室の大掃除当番がマネージメント課に当たっていて。三好さんが辞めて、女子社員はわたしと初野さんしかいない事態。当然、後輩の自分が大変な方を受け持つしかない。

「初野さん。しばらく6階にいるので、何かあったら内線ください」

「分かったー、こっちはやっとくからー」

書類棚に並ぶ不要になった資料を処分中の彼女に声をかけ、エレベーターで上に。

お昼も終わって、人の気配が全くない給湯室で作業にかかる。最初に来客用の湯飲みやコーヒーカップを漂白剤に漬けたり、頭の中で手順を思い浮かべながら一人で黙々と手を動かしていた。