津田さんにしては珍しくゆったりと食事をしたから、駐車場を出たのは二時近くになっていた。車は馴染みのない景色の中を走っていて、どこに向かっているのか見当もつかない。行き先を訊ねても答えてくれない自信があって、静かに助手席に納まって成り行きに任せる。
 悪い人じゃないっていうのが理由になるかは分からないけど。どこに連れて行かれるのかを不安に思うことはなかった。


 いくつかの市街を抜け、ビルやテナントが立ち並ぶ賑やかな都市の中心部に差し掛かっていた。片側二車線の道路は緩い渋滞で、車は進んだり停まったりを繰り返す。クリスマスらしく緑と赤と白にデコレーションされた街並みや、歩道を行き交う人達をぼんやり眺めて。

 津田さんは相変わらず無口で。・・・無口過ぎるような気もして、何となく窓から隣りに視線を戻したら目が合った。

「・・・なに?」

「いえ。何でもない・・・んですけど」

 歯切れの悪い言い方になったわたしに、はっきり言え、って横目で無言の圧力がかかる。 

「津田さんが喋らないので心配になって。・・・大丈夫ですか?」

 思ったままを言う。
 一瞬、間があって。

「小動物のクセに」

 また言われた。 

「俺は黙ってても脳ミソ動かしてんだよ」

 閉まった窓側に片肘を置き、ハンドルを操作する彼の口から面倒臭そうに溜め息が漏れた。

 いつもの素っ気なさと違って余裕がなく見えたのも、今日の気のせい・・・?