「・・・なあ明里。彼氏となんかあったろ?」

 土日はずっと亮ちゃんのマンションに通い詰めだったのが、いきなり途絶えればナオじゃなくても気が付く。
 クリスマスって恋人達のイベントも間近くなって、余計に気になったのかも知れない。後から帰ってきたナオがわたしの部屋をノックして、真顔で訊いた。

「もし浮気されたとか、明里が一方的に傷付けられたんだったら俺はそいつのこと、許さねぇから」

 パソコンデスクのイスに腰かけ、ネクタイを緩めながら、向かいのベッドに座ってるわたしを真っ直ぐ見据える。

 弟だけど長男。昔からナオは、自分がわたしとユカを守るって意識がすごく強かった。お母さんが死んじゃってからは、自他共に認める『お兄ちゃん』になって。お姉ちゃんの立つ瀬がないけど、頼りになって何より家族思い。

 ・・・ありがとうナオ。優しくてダイスキな弟。でもだから、本当のことは言わない。

「・・・誰が悪いとかじゃないから心配しないで。今はちょっと・・・気持ちの整理ができてないっていうか・・・それだけだから」

「つまり別れたってことかよ」

「・・・・・・・・・なのかなぁ」

 曖昧に笑って。

 いつもだったら『はっきりしろよ』って、ズバッと言いそうなのに。ナオはそれ以上追及しようとしなかった。
 
「・・・俺は明里の味方だからな。悩みがあるんなら、抱え込まねぇでちゃんと言えよ。明里の悪いクセなんだよ、そういうトコ昔っから」

 そう云って少し寂しそうに笑ったあと。わたしの頭をぽんぽんと撫で、部屋を出ていった。