それって。言い募ろうとしてちょうど電車の到着を告げるアナウンスが響き渡る。スマホをコートのポケットに滑り込ませ、バッグを手にした津田さんにそれ以上訊くことも出来ずに。手首を取られたままで各駅停車に乗り込んだ。

 車内は忘年会シーズンで金曜の夜だからか、サラリーマンの乗り合わせが多い。いつもより混雑していて、後ろも横も人に囲われている。前には津田さんが立っているし、目線の置きどころに困って俯き加減に大人しく揺られていた。あと20分。見えないストップウォッチを刻んで。
 
 忘年会ではジュースみたいなカクテルを3杯ほど飲んだだけで。少し疲れを感じてるくらい。引っかかったままのさっきの言葉を。思い返して自分なりに考えを巡らせてみる。

 津田さんは、真下社長に言われてわたしを監視してるの・・・? 亮ちゃんがわたしを引き離しても、グランド・グローバルの裏事情を知っていることに変わりはないから? それって。
 
 行き当たった思いが。目の前にそびえ立つ壁に、こつんと小さく音を立ててぶつかった気がした。跳ね返って足許に転がったそれを。わたしはかがんで両の掌に大事に掬いあげる。
 



 まだ繋がってた・・・? わたしと亮ちゃんの間の糸は。