九時前にやっとお開きになり、津田さんはさっさとわたしを引っ張って駅に向かった。たぶんそれを見ていた人もいたと思うけど、堂々と冷やかしを言うのは初野さんくらいだろうと諦める。ここまで来るとどうでもいい開き直りも生まれていた。
本当は一人でよかった。独りになりたかった。・・・放っておいて欲しかった。できたら津田さんとは一番・・・一緒にいたくなかった。
わたしの方面のホームで電車を待つ間も、掴まれたままの左手首。隣りに立つ彼は、黒いトレンチコートを着た両脚の間に下に置いたビジネスバッグを挟み、空いてる片手でスマホをスクロールしている。
清潔感のあるさっぱりとした髪型は、ワックスで軽く形を整えてあって。目立ちはしないけど、他人から見てもそれなりの容姿と思う。
「・・・なに?」
わたしの視線を感じたのか、不意にじろりと横目がこっちを向いた。
・・・愛想があったら逆に津田さんらしくないのかとも思う。そんなことが頭の隅を掠めながらも。この状況に少なからず戸惑っているのをそのまま伝えてみた。
「わたしの飼育係はもう終わったんじゃないんですか・・・?」
津田さんがわたしに関わる必要もなくなった。亮ちゃんだってそう思ってるはず。
胸の中で名前をなぞっただけで鼻の奥がつんとしたのを、涙栓が緩まないよう必死に抑え込む。
「それがどうした」
スマホの画面に視線を戻した津田さんから素っ気なく返った。
「手塚の管理は真下さんから一任されてる。・・・継続中だ」
社長から・・・?
思ってもなかった答えに無表情な横顔を凝視してしまう。すると鬱陶しそうに向いた目が、すっと細まった。
「日下さんがどう思ってようが、野放しにするには知りすぎてんだよ、あんた」
本当は一人でよかった。独りになりたかった。・・・放っておいて欲しかった。できたら津田さんとは一番・・・一緒にいたくなかった。
わたしの方面のホームで電車を待つ間も、掴まれたままの左手首。隣りに立つ彼は、黒いトレンチコートを着た両脚の間に下に置いたビジネスバッグを挟み、空いてる片手でスマホをスクロールしている。
清潔感のあるさっぱりとした髪型は、ワックスで軽く形を整えてあって。目立ちはしないけど、他人から見てもそれなりの容姿と思う。
「・・・なに?」
わたしの視線を感じたのか、不意にじろりと横目がこっちを向いた。
・・・愛想があったら逆に津田さんらしくないのかとも思う。そんなことが頭の隅を掠めながらも。この状況に少なからず戸惑っているのをそのまま伝えてみた。
「わたしの飼育係はもう終わったんじゃないんですか・・・?」
津田さんがわたしに関わる必要もなくなった。亮ちゃんだってそう思ってるはず。
胸の中で名前をなぞっただけで鼻の奥がつんとしたのを、涙栓が緩まないよう必死に抑え込む。
「それがどうした」
スマホの画面に視線を戻した津田さんから素っ気なく返った。
「手塚の管理は真下さんから一任されてる。・・・継続中だ」
社長から・・・?
思ってもなかった答えに無表情な横顔を凝視してしまう。すると鬱陶しそうに向いた目が、すっと細まった。
「日下さんがどう思ってようが、野放しにするには知りすぎてんだよ、あんた」



