亮ちゃんは黙ったままで、深く深くわたしを見つめていた。・・・何も読み取れない湖の水底のような眸の奥で。

 張り詰めて、答えを待つわたしに。

「・・・俺は明里と生きてはやれない」

 低くはっきりと告げた。


 最初からそう決めていた答えだと。亮ちゃんの眼を見た時に少しの覚悟はあった。言われた瞬間は胸の奥をこれでもかって抉られて。痛いのか苦しいのかも分からないくらい、息が止まりそうだった。
 
 再会した頃の自分だったらきっと。ただ悲しくて、打ちひしがれて。それでも亮ちゃんを心の中でずっと思い続けるだけでいいって、そんな風に思ったかもしれない。

 わたしはこんなにワガママだったのかな・・・?
 亮ちゃんを困らせるだけなのに。
 亮ちゃんを苦しめたいわけじゃないのに。

 躰中がイヤだって叫んで。どうにもならないの。
 諦めるくらいなら、死んでしまいたいとさえ。

 涙が零れた。


 ごめんなさい亮ちゃん。一番、亮ちゃんが傷付く方法を選ぶわたしを許さなくていいから。
 
「・・・・・・わたしを好き・・・?」

 震える声で亮ちゃんを見上げた。
 亮ちゃんは僅かに儚げな気配を眼差しの奥に揺らした。でも何も云ってくれなかった。

「・・・最後になるなら、おねがい。・・・・・・抱いて」
  
 わたしは亮ちゃんを見つめて。・・・頬を濡らしながら静かに微笑んだ。