休憩時間の終わりに、短く津田さんにラインを送った。『亮ちゃんが戻ると聞きました。いつですか』。
 その場で既読マークはつかなかった。


 退社時間になって、初野さんに挨拶するのもそこそこにロッカールームに駆け込んだ。真っ先にバッグの中のスマホを確認すると、既読にはなっていたものの返信はなく、深い溜息が漏れる。

 明日には亮ちゃんが戻る噂は社内に広まってるんだろう。帰ってくるのなら待っているしか。それでも居ても立っても居られない思いに、気持ちだけが逸って落ち着かない。今日は水曜日。週末にマンションに行ったらもしかしたら。
 淡い期待を胸にきゅっと抱き締めて、いそいそと着替え始めた。
  
  
 

 夜になっても津田さんからは何の返信もなかった。わたしには教えたくない? どうして。時間が経って冷静になれた分、色々なことを考えてしまう。

 津田さんがわたしに社長と取引しても無駄だって言ったのは、亮ちゃんが戻るのをもう知っていたから? じゃあ・・・諦めろって言ったのは? なにを? ・・・分からない。

 社長もエレベーターで会ったあの場で、わたしに亮ちゃんの話は出来なかったのかも知れない。でも最後に交わしたあの眼差しは、それを伝えようとしたのとは違う気がした。なにか・・・迫られたような。
 ベッドの上であおむけになって天井をじっと見つめる。


 もうすぐ亮ちゃんに逢える。今はそれだけを信じる。祈るように、そっと目を閉じた。