臆病な背中で恋をした ~2

言葉を忘れて明里を見つめる。
あまつさえ自分を殺そうとした男に、命ごと差し出す女が目の前にいた。
もうあの頃とは違うと言いながら、明里を子供の頃と重ねてるのは俺だったと気付いた。

「・・・・・・本気か」

「亮ちゃんはときどき、言うことを信じてくれない。もうとっくにわたしは亮ちゃんのものなのに・・・っ」

悲しげに顔を歪めた明里は、そう言って涙ぐむ。

「どうしても連れてってくれないなら、どこにいても同じだもん。・・・真下社長のところに行く。前に津田さんが言ってた、わたしのことは社長預かりで監視してるって。それだったら社長のところにいれば、津田さんにも亮ちゃんにも迷惑にならないもん・・・」

「な・・・」

話がいきなり想定外の方向に転がり、なにを言い出すんだと声を荒げかけて飲み込んだ。
冗談じゃない。お前はあの人の本性を知らないから簡単に言えるんだ・・・! 
想像しただけで怖気が走り、思わず明里の両肩を強く掴んだ。

「バカ言うな、お前を真下さんのところにやるつもりは死んでも無い・・・!」

「・・・・・・・・・」

恨みがましそうな上目遣いに、少し焦りも滲む。

「いや、・・・だから、明里の気持ちを信じてないわけじゃない。俺がその、お前が津田のことを持ち出すのが気に食わなかっただけだ。とにかく、・・・頼むから真下さんのところに行くなんて二度と考えるな」

冷静さを装いながら、背中を冷たい汗が伝った。
明里は言い出したら聞かない頑なところがある。本心を晒して真正面から責めないと納得しないだろうと思った。