【飼い主編】


少し遅くなったが津田のところに寄り、明里を自分のマンションに連れ帰ることにする。明日は土曜で会社は休日だ。俺も夕方までは時間があった。

車の助手席に収まった途端、食い入るように俺を見つめ続ける明里。視線は痛くも痒くもなかったが、自然と溜息が漏れる。

「・・・そんなに俺を見てたいか」

「うん。亮ちゃんだけ見てたい」

満面の笑顔で、昔と変わらずに可愛いことを言う。

玄関先までスリッパの音をさせて駆け寄ってきた時の、明里の嬉しそうな顔がよぎった。
そのままの勢いで俺の胸に飛びつき、抱き締め返してやると俺の名を呼びながら小さく躰を震わせた。

泣かせている罪悪感と求められている充足感とが()い交ぜになって。そのつもりはなかったのを、気が付けば『・・・俺と帰るか』と口から零れていた。